正面打ち入身投げについて少し書いてみたいと思います。
合気道の基本技の一つである正面打ち入身投げですが、道主がされている合気道の基本を含め、多くの先生・師範が最後に一歩足を踏み込む形で稽古をされています。もちろん道主がされる形こそが合気道の一番の基本であると私は考えております。
道主の入身投げ
そんな中、私の師匠多田宏師範は足を踏み込まない形で稽古をされていますので、合気道入江道場でもそれに倣う形で稽古をしています。
多田先生の入身投げ(1:47くらいから)
ただ本部道場や他の合気道場の稽古仲間からも、「なぜ多田先生は入身投げの時に足を出さないの?」等と質問を受けることがあります。多田先生がなぜそうするか?という質問に私は答えられるような立場ではありませんが、多田先生が指導の際おっしゃっていた内容を含め私の解釈をいくつか書いてみたいと思います。あくまで私の解釈なので、多田先生が指導の際おっしゃっていた言葉そのままではありません。
・そもそも開祖は技に名前をつけなかった。
合気道の技の名前は、弟子たちが自分の稽古理解及び復習のため、あるいは後進の指導のために二代吉祥丸道主を中心に名付けたものであり、本当は技の名前はなく、ある意味全部呼吸投げであり呼吸法(呼吸力養成法)である。
・開祖の技は千変万化で、いつも少しづつ細かい所が違う。
現在入身投げと呼ばれる技に含まれると思われる開祖の技の中には、足を踏み込んで投げるものと踏み込まずに投げるものがあった。また、開祖は入身投げ(と現在呼ばれる技)に関して、稽古の中で様々な工夫をされていた(相手のおでこをはたく、腕を相手の首に巻き付けて下に落とす等)。ただ相手を投げるためのものではなく、より良い稽古ができる技にするために工夫をされており、気の流れの錬磨・呼吸力の鍛錬としては足を出さない形ではっきりと体重移動を意識するとより呼吸の伸びをだせる良い稽古ができる。
・足を出す場合も、しっかり体重移動をしてから出す。
相手が崩れる前に安易に足を出すと逆に自分の方が崩れるので、足を出して投げることを前提に稽古を行うとうまくいかないことがある。 ・開祖は槍の名人だった
ご自分の武技を自ら誇示することの無かった開祖ですが、「わしは槍には自信がある。」とおっしゃったことがあるそうです。槍ではありませんが、月窓寺道場の後ろには棒がおいてあり、私が若い頃、「これでしごき突きの稽古をたくさんやれ、そうすれば入身投げが上手になる。」と多田先生に言われたことがあります。道場の残り稽古だけではあまりたくさんやる時間がなかったので、結局家で杖でやったりしてましたが、やり始めてすぐはピンときませんでした。
すぐにはあまり実感がわかないですが、とにかく言われたとおりにやり続けていくと、なんとなく体重移動に呼吸がのっていく感じが分かってきます。これを逆にとらえていくと、入身投げの時に足を踏み込まないで投げる稽古をしていくと、槍や杖でしごき突きをする感覚・呼吸を身に付けることができ、呼吸力の鍛錬になるのではないでしょうか。
対して、足を踏み込んで投げる形では剣で切り込んでいく呼吸になると思います。
色々書きましたが、同じ技でもどこに重点をおいて稽古をするかによって、技の流れや形が変わってきます。自分が最初に習った形だけにとらわれるのではなく、例えば本部道場の師範の講習会に出た時は、その先生がその時指導する形をしっかりと模倣して稽古をしてみることが大事だと思います。
道場での入身投げの指導をまとめてみました。正面打ち入身投げという一つの技からいろんな事を学んでみようというのがコンセプトです。
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